みやめも2.0

思考のメモ書き

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緊急事態条項を巡る首相の答弁を検討する。1/19参院予算委

※2016/01/26に書いた引っ越し前の記事です

 

安倍晋三首相は19日の参院予算委員会で、自民党が2012年に発表した憲法改正草案の緊急事態条項について「国際的に多数の国が採用している憲法の条文だ」と述べ、緊急事態条項新設に意欲を見せた。
(中略)自民党草案には、緊急事態に法律と同じ効力を持つ政令を出すことができると記載。この条項について、社民党福島瑞穂副党首は「立法権を国会から奪うものだ。ナチス・ドイツの授権法と全く一緒だ」と批判した。首相は「限度を超えた批判だ。諸外国に多くの例がある」と反論した。(毎日新聞より)



と、こんなことがありました。 
今回はこのときのやり取りについて検討していきます。これによって自民党草案の緊急事態条項とはどういうものなのか、少しは理解が進むのではないでしょうか。そのためにまず、「緊急事態条項」一般について、簡単に説明します。

災害やテロなどが起こった場合には、政府の素早い対応が求められますよね。あまり悠長に対応していては、被害が拡大する恐れがあるためです。軍(自衛隊)を動かす必要があったり、市民にあまり自由にウロウロされては困るので移動範囲を制限したり、ケースによって適切な対応というものは様々あります。しかし自衛隊をいつでも好き勝手に動かされては困るし、移動の自由は基本的人権にあたるので原則として制限されません。ですから「こういうときにはこういう理由があるからこういう対応をします」ということをあらかじめ定めておくんですね。これが政府の対応の基本形になります。ただ当然ですが「あらかじめ想定しておく」というのにも限度がありますから、なかには既存の条件では必要な対応ができないというケースもあるかもしれません。新しく条件を定めることで対応できるようにはなるけれど、事態は緊急を要するのでいちいち通常の手続きで議会を開いていられない…
そんな状況に対する策のうちの一つが「緊急事態条項」という考えなんですね。



首相のやり取りについての検討に戻りましょう。

●「国際的に多数の国が採用している憲法の条文だ」という言い分は趣旨を考えると間違いである

「趣旨を考えると」とはどういうことなのか説明します。
まず「緊急事態条項は国際的に多数の国が採用している」これは
間違いではありません
しかし「自民党草案のような形での緊急事態条項」となるとこれは
極めて異例で、度を越えています
そして今回のやり取りの趣旨とは、あくまで自民党草案に盛り込まれた緊急事態条項について言及するものです。したがって「趣旨を考えると」首相の発言は明らかな間違いになるんですね。果たして首相は趣旨を組み取れなかったのか、海外の例について知識がなかったのか…

では肝心な自民党草案の緊急事態条項が異例であるとする根拠は何か。
自民党の定めたものでは、緊急事態だと認定した場合、政府は法律と同等の効力を持つ命令(独立命令)を出すことが可能になります。
ここで海外の例を見ると、緊急事態すなわち「議会をいちいち開いていられない」というとき、特別委員会程度で対応できるようにしている国や、立法ではなく個別の行政措置を取ること許可している国は確かに少なからずあります。しかし自民党草案のように、立法権を丸投げして、なおかつそこに議会も委員会も関与しないというような規定は国際的に見て極めて異常で、白紙委任になる恐れを孕んでいるという点で大変危険です。これを「他の国と同じ」などと言われては、たまったものではありません。

☆☆☆

この記事を読んでくださっている方の中には、上にある緊急事態条項についての説明を見た際、「たしかにそれは必要かも」と思った方もいると思います。しかしその説明で「策のうちの一つ」と言ったのが実は大切なことで、国家緊急権に対する向き合い方については色々なものがあるんですね。現在の日本も何も策が無いというわけではなく、立法が必要な緊急事には政府が国会の召集権を持つようになっていたり、それが衆議院の解散中であれば参議院の緊急集会で代行できるようになっていたりと日本なりのシステムを構築しています。よく誤解されるんですが緊急事態についての規定が無いわけじゃないんですよ。それで十分なのかという議論はありますが、いずれにせよ、少なくとも自民党改憲草案の緊急事態条項については未熟で危険なものであるということが明らかです。
今回の緊急事態条項に限らず、よく自民党の人などは憲法改正を促す文句として「当たり前のことをできるようにしよう」みたいなことを言うんですが、じっくり検討してみると問題が見つかるというケースが非常に多いです。とくに憲法というのは解釈の余地というものがありますから、一見すると最もらしいことを言うのが簡単なんですね。僕ら個人はこれから更に増えるであろうそういったある種の「ウマい話」に対面したとき、すぐに問題点を指摘できなくてもよいので、まずは鵜呑みにせず疑ってみることが大切だと思います。僕もこのブログを書くことで、ささやかな範囲ですが手助けができればなぁと思っています。自民党憲法草案についてはまだまだ色々な変更点があるので、また記事を書くかもしれません。

それではまた。

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